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2026.5.1
【相続税額の2割加算とは?】対象になる人・ならない人と知っておくべき注意点を解説

相続税は、財産を受け取れば誰でも同じ税率で計算されるわけではありません。

財産を受け取る人と亡くなった方との関係によっては、算出された相続税額にさらに20%が上乗せされる「2割加算」というルールがあります。

兄弟姉妹、甥・姪、孫などが財産を受け取った場合に、適用される制度です。

この制度を知らずに申告してしまうと、過少申告としてペナルティを受けるおそれや、想定外の税負担が発生することに繋がってしまいます。

また、「生前対策の段階から知っていれば、もっと効率的に対策できたのに」というケースもあるでしょう。

本記事では、2割加算の仕組みと趣旨、対象になる人とならない人の区別、そして実務上よく問題になるケースと対策のポイントまでを解説していきます。

相続税の2割加算とは?

相続税額の2割加算とは、相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人の「一親等の血族」および「配偶者」以外の人である場合に、その人の相続税額に20%を上乗せする制度です。

一親等の血族とは、被相続人の子(実子・養子)と父母を指します。

この制度が設けられている理由は、大きくわけて2つあります。

① 課税の公平性の確保:
被相続人と血縁が遠い人や血縁関係のない人が財産を取得するのは偶然性が高く、被相続人と生計をともにしていた配偶者や子と同じ税負担では不公平であるという考え方です。

② 世代飛ばしの調整:
たとえば祖父から孫へ直接財産を渡すと、「祖父→子」「子→孫」と本来2回かかるはずの相続税が1回で済んでしまいます。この課税機会の減少を調整する目的もあります。

2割加算の対象になる人・ならない人

原則はシンプルで、「配偶者・子・父母以外の人が財産を受け取ったら2割加算」です。

ただし、孫や養子については例外的な取り扱いがあるため、少し注意が必要です。

加算されない人

配偶者法律上の婚姻関係にある配偶者は、常に2割加算の対象外です。
子(実子・養子)被相続人の子は一親等の血族にあたるため、加算されません。養子も法律上は実子と同じ一親等の血族として扱われるため、原則として対象外です。ただし、孫を養子にした場合(孫養子)は例外的に加算対象となります。
父母被相続人の父母も一親等の血族です。子が先に亡くなり、親が相続人となるケースでは加算されません。
代襲相続人となった孫被相続人の子がすでに亡くなっていて、孫が子に代わって相続人となる「代襲相続」の場合、その孫は一親等の血族と同様に扱われ、2割加算の対象外となります。

加算される人

上記以外の人が財産を取得した場合は、基本的にすべて2割加算の対象です。

代表的な例としては、以下があげられます。

兄弟姉妹(二親等)独身で子のいない方が亡くなった場合など、兄弟姉妹が法定相続人になるケースは珍しくありません。法定相続人であっても二親等の血族であるため、2割加算が適用されます。
甥・姪(三親等)兄弟姉妹がすでに亡くなっていて、甥・姪が代襲相続する場合も加算の対象です。
祖父母(二親等)子も父母もいない場合に祖父母が相続人となるケースでは、祖父母にも2割加算が適用されます。
孫(代襲相続でない場合)遺言で孫に直接財産を渡す場合(遺贈)、その孫が代襲相続人でなければ2割加算の対象です。
子の配偶者(嫁・婿)子の配偶者は一親等の「姻族」であり、血族ではないため加算対象です。介護への感謝として遺言で財産を渡す場合などに注意が必要です。
内縁のパートナー、友人、知人など親族以外の方が遺贈や特別縁故者への分与によって財産を取得した場合も、すべて2割加算の対象となります。

複雑で注意が必要な「孫」のケース

2割加算の判定で最もややこしいのが「孫」が財産を受け取るケースです。

状況によって対象になったりならなかったりするため、整理しておきましょう。

●代襲相続人としての孫 → 加算されない
被相続人の子がすでに亡くなっており、孫が子に代わって相続人となっている場合です。この場合、孫は一親等の血族と同等に扱われます。

●遺贈で財産を受けた孫(代襲でない)→ 加算される
被相続人の子が存命であるにもかかわらず、遺言で孫に直接財産を渡す場合です。孫は二親等の血族であり、加算対象となります。

●孫養子 → 加算される
被相続人が孫と養子縁組をした場合、民法上は一親等の法定血族となりますが、相続税法では孫養子を一親等の血族に含まないと規定しています。これは、孫養子にすることで「子→孫」の相続税を1回飛ばすことへの対抗措置です。

●孫養子が代襲相続人でもある場合 → 加算されない
孫養子であっても、その親(被相続人の子)がすでに亡くなっていて代襲相続人にもなっている場合は、例外的に2割加算の対象外となります。

2割加算の計算方法

2割加算の計算はシンプルです。

加算額 = 各人の税額控除前の相続税額 × 20%

ポイントは、配偶者の税額軽減や未成年者控除などの税額控除を適用する「前」の金額に対して20%を掛けるという点です。

加算後の税額から各種控除を差し引いて、最終的な納税額が決まります。

具体例で見てみましょう。

【例:被相続人Aの遺産総額が1億円の場合】
・法定相続人:Aの兄B(1人のみ)
・基礎控除額:3,000万円+600万円×1人=3,600万円

課税遺産総額:1億円-3,600万円=6,400万円
Bの相続税額(税率表による計算):1,180万円
2割加算額:1,180万円×20%=236万円
Bの最終納税額:1,180万円+236万円=1,416万円

上記のケースでは、2割加算によって236万円が上乗せされます。

遺産額が大きくなるほど加算額も大きくなるため、影響は無視できません。

2割加算が実務で問題になりやすいケース

兄弟姉妹が法定相続人になるケース

独身で子どものいない方が亡くなり、両親もすでに他界している場合、法定相続人は兄弟姉妹になります。

この場合でも、兄弟姉妹は法定相続人ではあるものの二親等の血族であるため、2割加算の対象です。

「法定相続人なのだから加算されないだろう」という思い込みは危険です。

法定相続人かどうかではなく、一親等の血族かどうかが判断基準であることを覚えておきましょう。

遺言で孫に財産を渡すケース

「子ども世代を飛ばして孫に直接渡せば、相続税を1回分節約できるのでは?」と考える方がいますが、まさにこのケースこそ、2割加算適用の代表例です。

確かに、孫に直接渡せば「子→孫」の相続が省略され、相続税の課税機会は1回減ります。

しかし、その代わりに孫の相続税額に20%が上乗せされるため、必ずしも得になるとは限りません。

結果的にトータルの税負担がどちらが軽くなるかは、遺産の総額や家族構成、他の相続人の取り分によって大きく変わります。

「一代飛ばし」を検討する場合は、必ず専門家にシミュレーションを依頼しましょう

子の配偶者(嫁・婿)への遺贈

「長年介護をしてくれた息子の嫁に財産を残したい」というケースは実務上よく見られます。

しかし、子の配偶者は法定相続人ではないため、財産を渡すには遺言による遺贈が必要です。

そして、遺贈で取得した財産には2割加算が適用されます。

なお、2019年の民法改正で創設された「特別寄与料」の制度を使えば、相続人ではない親族が介護等の貢献に応じて金銭を請求できるようになりました。

この特別寄与料として受け取った金額も相続税の対象となるため、2割加算が適用されます。

2割加算の注意点や生前対策のポイント

相続税の負担を軽くする有効な手段として、「基礎控除枠」や「小規模宅地等の特例」、「生命保険の非課税枠」などがあります。

これらの制度は2割加算にも有効なものもあれば、そうでないものもあります。

また、生前のうちに対策を講じることで税負担を軽減できる手段も存在します。

事前にしっかり確認しておきましょう。

小規模宅地等の特例と2割加算

小規模宅地等の特例は、被相続人の自宅や事業用の土地の「評価額」を最大80%減額して相続税を計算できる制度です。

2割加算は元々の評価額ではなく「算出された相続税額」に対して20%を上乗せする仕組みです。

つまり、特例によって土地の評価額が下がることで、2割加算の額も小さくすることが可能です。

生命保険の非課税枠と2割加算

死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますが、この非課税枠を使えるのは法定相続人が受取人の場合に限られます。

孫や子の配偶者のように法定相続人ではない方を受取人にした場合、非課税枠は適用されません。

受け取った保険金の全額が相続税の課税対象となり、さらにそのうえで2割加算も適用されます。

非課税枠が使えないことと2割加算が重なるため、想定以上の税負担になることがあります。

孫や子の配偶者に保険金を届けたいという意図自体は問題ありませんが、その場合の税負担を事前に把握しておくことが重要です。

相続時精算課税を使った孫への贈与

相続時精算課税制度を使って孫に生前贈与を行っていた場合、贈与した財産は相続発生時に相続税の課税対象に加算されます。

このとき、孫は一親等の血族ではないため、加算された財産に対する相続税にも2割加算が適用されます。

相続時精算課税制度を利用する際には、贈与時の非課税メリットだけでなく、将来の相続時に2割加算が適用される可能性も織り込んで判断することが大切です。

暦年贈与の活用

孫への財産移転を考えている場合、毎年の暦年贈与(年110万円までの基礎控除枠内の贈与)であれば、贈与税はかからず、相続税の2割加算の問題も生じません。

ただし、相続開始前の一定期間内(現行では原則3年以内、2024年以降の贈与から段階的に加算期間が3年から7年に延長)の贈与は相続財産に加算される点に注意が必要です。

教育資金・結婚子育て資金の一括贈与制度の活用

孫に対してまとまった金額を非課税で渡したい場合、教育資金の一括贈与制度(受贈者1人あたり1,500万円まで非課税)や、結婚・子育て資金の一括贈与制度(同1,000万円まで非課税)を活用する方法もあります。

これらの制度を利用した贈与であれば、贈与税も相続税の2割加算も問題になりません。

ただし、いずれの制度にも適用期限や対象となる支出の範囲に条件があります。

また、贈与者が亡くなった時点で使い切れていない残額がある場合は相続財産に加算されるため、孫が受贈者であれば2割加算の対象となる可能性があります。

利用する際は「使い切れる見込みがあるかどうか」を事前に見極めることが大切です。

養子縁組のメリットとデメリット

養子縁組をすると法定相続人が増えるため、基礎控除額や死亡保険金の非課税枠が拡大し、相続税の総額を抑える効果があります。

ただし、孫を養子にした場合は前述のとおり2割加算の対象となるため、基礎控除の拡大メリットと2割加算のデメリットを天秤にかける必要があります。

いずれの方法も、家族構成や遺産の規模によって有利・不利が変わります。

「一代飛ばしで孫に渡すか」「子を経由して二段階で渡すか」を判断するには、両方のパターンで相続税をシミュレーションし、トータルの税負担を比較するのが確実です。

まとめ

2割加算は、「誰が財産を受け取るか」によって相続税額が大きく変わるルールです。

法定相続人であっても兄弟姉妹や甥・姪であれば加算の対象になりますし、節税目的で孫を養子にしても加算は免れません。

一方で、このルールを事前に知っていれば、暦年贈与や教育資金の一括贈与制度を活用するなど、取れる選択肢は広がります。

大切なのは、「渡したい相手に渡す方法」と「税負担のバランス」を、生前の早い段階で整理しておくことです。

相続はご家族ごとに事情が異なるため、一般論だけでは判断しきれない場面が少なくありません。

わかば税務会計事務所では、それぞれの条件・状況に合わせた適切なサポートを実施しております。

気になることがあれば、是非お気軽にご相談ください。

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