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2026.3.24
【相続税額がゼロでも要注意!】相続税がかからなくても申告が必要なケースとは?

「うちは相続税がかからないから、申告もしなくてよさそう」

なんとなくそう考えている方は多いのではないでしょうか。

たしかに、遺産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。

しかし問題は、「特例や控除を使った結果として税額がゼロになる」ケースです。

この場合、たとえ納める税金が1円もなくても、申告書の提出が必須とされています。

申告が必要だと知らずに放置してしまうと、特例そのものが適用できなくなり、本来ゼロだったはずの税額が発生します。

さらに、その税額をもとに加算税や延滞税まで上乗せされるという「二重の痛手」を負うことにもなりかねません。

本記事では、相続税の申告が必要なケースと不要なケースの違いを整理し、特に見落としやすいポイントなども解説していきます。

基礎控除の仕組み

相続税には、すべての相続に適用される非課税枠として「基礎控除」が設けられています。

計算式は次のとおりです。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数

例として、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は3,000万円+(600万円×3)=4,800万円となります。

この場合、遺産総額が基礎控除額(4,800万円)以下なら、相続税は課税されず申告も不要です。

実際、年間に発生する相続のうち、相続税の申告が必要になるのは全体の約1割程度とされています。

大多数のケースでは基礎控除の範囲内に収まり、申告の必要はありません。

「税額ゼロ」と「申告不要」はイコールではない

ここが最も注意すべきポイントです。

「相続税がかからない」状態には、大きく分けて2つのパターンがあります。

パターン①:遺産総額がそもそも基礎控除以下

パターン②:遺産総額は基礎控除を超えるが、特例や控除を適用した結果、税額がゼロになる

しかし、税務署の立場で考えると、申告書の提出がなければ「特例を使わなくても税額ゼロなのか」「特例を使った結果としてゼロなのか」を判断できません。

そのため、特例の適用を受けるには申告書の提出が必須の要件とされています。

つまりパターン②の方では、税額がゼロでも申告はしなければならないのです。

税額ゼロでも申告が「必要」な特例・控除

以下の特例や控除は、いずれも節税効果が非常に大きく、適用すれば税額がゼロになるケースは珍しくありません。

しかし、そのいずれも「期限内に申告すること」が適用の要件に含まれています。

①配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者が遺産を取得した場合、次のいずれか大きい金額までは相続税がかかりません。

(1)1億6,000万円
(2)配偶者の法定相続分に相当する金額

この制度は非常に強力で、配偶者が相続する場合の大半で税額がゼロになります。

しかし、この軽減を受けるためには、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに相続税の申告書を提出しなければなりません

「自分は配偶者だから税金はかからない」と思い込んで申告しないと、軽減を受けられず、本来不要だった相続税を納めることになります。

なお、申告期限までに遺産分割がまとまっていない場合は、いったん法定相続分で申告したうえで、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておきましょう。

分割が確定した後に改めて更正の請求を行えば、配偶者の税額軽減を適用できます。

②小規模宅地等の特例

被相続人が居住していた土地や事業に使っていた土地を相続した場合、一定の要件を満たせば評価額を大幅に減額できる制度です。

減額幅が非常に大きいため、この特例を適用することで遺産総額が基礎控除以下に収まるケースも少なくありません。

配偶者控除と同様に、小規模宅地等の特例も、申告期限までに申告書を提出することが適用要件に含まれています。

申告をしなければ特例は適用されず、土地の評価額は減額前のまま計算されるため、想定外の税額が発生します。

自宅を相続する場合は注意しましょう。

③相続財産を公益法人等に寄付した場合の非課税特例

相続や遺贈によって取得した財産を、申告期限までに国・地方公共団体・特定の公益法人などに寄付した場合、その寄付した財産は相続税の課税対象から除外されます。

この特例を適用するには、相続税の申告書に寄付した財産の明細を記載し、寄付先が発行する受領書や証明書類を添付する必要があります。

遺贈寄付を検討している方は、忘れずに対応しましょう。

④農地・非上場株式等の納税猶予の特例

農業を営んでいた被相続人から農地を相続し、引き続き農業を行う場合、農地にかかる相続税の納税が猶予される制度があります。

名称は「猶予」ですが、要件を満たし続ければ最終的に税額が免除されるケースが多く、実質的には非課税に近い効果があります。

同様に、中小企業のオーナーが亡くなった際、後継者が非上場株式を相続して事業を承継する場合にも、一定の要件を満たせば相続税の納税が猶予される「事業承継税制」があります。

いずれの制度も、申告期限までに申告書を提出し、猶予を受ける旨を届け出ることが前提です。

農家や中小企業の事業承継に該当する方は、早い段階で専門家に相談しておくことをおすすめします。

税額ゼロかつ申告も「不要」な控除・非課税枠

一方で、以下の控除や非課税枠を適用して税額がゼロになった場合は、申告書を提出する必要はありません。

①死亡保険金・死亡退職金の非課税枠

生命保険の死亡保険金や勤務先からの死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

たとえば、法定相続人が3人であれば、死亡保険金は1,500万円まで非課税です。

この非課税枠の適用にあたって申告書の提出は必要ありません。

ただし注意したいのは、非課税枠を超えた部分は課税対象の遺産に加算されるという点です。

非課税枠の範囲内に収まっているかどうかは正確に確認しておきましょう。

②未成年者控除・障害者控除

相続人が未成年者の場合、18歳に達するまでの年数×10万円が相続税額から控除されます。

また、相続人が障害者の場合にも、85歳に達するまでの年数に応じた控除が受けられます(一般障害者は年10万円、特別障害者は年20万円)。

これらの控除を適用した結果、税額がゼロになるのであれば、申告は不要です。

控除額が本人の税額を超える場合は、超過分を扶養義務者の税額から差し引くこともできます。

③相次相続控除

相次相続控除とは、10年以内に立て続けに相続が発生した場合、前回の相続で課税された相続税の一部を今回の相続税から控除できる制度です。

この控除によって税額がゼロになった場合も、申告は不要です。

なお、「申告が不要」とはいえ、多額の遺産がある場合は、計算を慎重に行う必要があります。

控除を適用してもゼロにならない可能性もありますので、早めに専門家に確認しましょう。

申告しなかった場合のペナルティ

「期限内申告」が適用要件の特例で申告を怠った場合、ペナルティも含めた様々なデメリットが発生してしまいます。

非常に大きなマイナスとなりますので、注意しましょう。

特例が使えなくなるリスク

申告をしないまま期限を過ぎると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は適用できなくなります。

その結果、本来ゼロだった税額が数百万円~数千万円単位で発生し、さらにその税額をベースに以下の加算税・延滞税が上乗せされます。

無申告加算税

期限内に申告書を提出しなかった場合、本来納めるべき税額に対して無申告加算税が課されます。

税率は申告のタイミングによって異なります。

税務調査の通知前に自主的に期限後申告した場合税額の5%
税務調査の通知後~調査前に申告した場合50万円以下の部分は10%、
50万円超の部分は15%
税務調査を受けてから申告した場合50万円以下の部分は15%、
50万円超300万円以下の部分は20%、
300万円超の部分は30%

また、過去5年以内に相続税で無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合は、さらに10%が上乗せされます

気づいたらできるだけ早く自主的に申告することが、ペナルティを最小限に抑えるポイントです。

延滞税

納税が遅れた日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。

2026年時点の特例税率では、納期限から2か月以内は年2.4%程度、2か月を超えると年8.7%程度です。

延滞税は日数に応じて加算されていくため、放置すればするほど負担が膨らみます

無申告加算税と延滞税は併課されるので、両方合わせると相当な金額になることがあります。

重加算税

財産を意図的に隠したり、虚偽の申告をしたりした場合には、無申告加算税に代わって重加算税が課されます。

税率は、過少申告の場合で35%、無申告の場合で40%です。

さらに、重加算税の対象となった財産については、配偶者の税額軽減を適用できないという追加ペナルティもあります。

悪質なケースでは刑事罰(懲役・罰金)の対象になることもあります。

申告要否の判断を間違えやすい「財産の評価」

申告が必要かどうかを判断する大きなポイントは、遺産総額が基礎控除を超えるかどうかです。

しかし、この「遺産総額」の計算を間違えていると、判断を誤ってしまいます

ここでは、自己判断で誤りやすい財産評価のポイントを解説します。

不動産の評価 ― 「時価」と「相続税評価額」は違う

不動産は相続財産の中でも評価を間違えやすい代表格です。

相続税の計算では、土地は原則として国税庁が毎年公表する「路線価」をもとに評価します。

路線価がない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかける「倍率方式」を使います。

ここで注意したいのは、固定資産税の納税通知書に記載されている評価額だけを見て「基礎控除以下だから大丈夫」と判断してしまうケースです。

固定資産税評価額は時価の約7割、路線価は時価の約8割を目安に設定されており、固定資産税評価額は路線価よりも低いことが多いのです。

固定資産税評価額では基礎控除以下に見えても、路線価で正しく計算し直すと基礎控除を超えていた、ということが起こり得ます。

また、土地の形状や接道条件、借地権の有無などによって評価額は大きく変動します。

路線価に各種補正率(奥行価格補正、不整形地補正など)を掛けて計算する必要があるため、正確な評価は専門家でなければ難しいのが実情です。

建物の評価 ― 固定資産税評価額がそのまま使われる

建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額と同額です。

毎年届く固定資産税の納税通知書に記載されている金額がそのまま使えるため、土地に比べると分かりやすいと言えます。

ただし、賃貸に出している建物の場合は、借家権割合(通常30%)を差し引いた金額が評価額となります。自用の建物と賃貸の建物では評価が異なる点に注意しましょう。

なお、2024年1月以降に相続した分譲マンション(居住用の区分所有財産)については、従来の固定資産税評価額に「区分所有補正率」を乗じて評価する新ルールが導入されています。

タワーマンションの高層階などでは、従来より評価額が上がるケースがあるため、最新のルールを確認しておく必要があります。

また、与党税制調査会では、相続直前に購入された投資用不動産について、路線価ではなく取得価額で評価する案も検討されています。

今後の税制改正の動向にも注意が必要です。

名義預金 ― 名義だけでは判断できない

被相続人が配偶者や子ども・孫の名義で管理していた預金は、「名義預金」として被相続人の相続財産に含まれる場合があります。

口座の名義が誰であるかではなく、実質的に誰がその預金を管理していたかで判断されます。

税務署は、被相続人の過去の所得や預金の出入り履歴などを調査して名義預金を把握します。

「子どもの名義だから相続財産には入らないだろう」と思い込んで遺産総額から除外してしまうと、後から税務調査で指摘される可能性があります。

具体的には、以下が判断のポイントとなります。
●口座の開設・入金を誰が行ったか
●通帳やキャッシュカードを誰が管理しているか
●名義人が自由に使える状態にあったか

相続時精算課税制度の適用分 ― 「過去の贈与」を忘れていないか

相続時精算課税制度を使って過去に贈与を受けていた場合、その贈与財産は相続税の課税対象に加算する必要があります。

この制度は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税が非課税になるものです。

ただし、相続発生時に贈与財産を相続財産に戻して精算する必要があります。

制度を利用したのが10年以上前だと、本人も忘れてしまっているケースがあります。

しかし、税務署側はデータを保有しているため、申告漏れがあれば指摘されます。

過去にまとまった贈与を受けた記憶がある場合は、相続時精算課税制度を利用していなかったか確認しておきましょう。

みなし相続財産 ― 保険金・退職金の「非課税枠超過分」

死亡保険金や死亡退職金は、民法上の相続財産ではありませんが、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれます。

非課税枠がありますが、この枠を超えた部分は遺産総額に加算されます。

複数の保険契約がある場合は合算して計算する必要があります。

保険金の存在を忘れていて、基礎控除以下だと思い込んでいたというケースは実務上も散見されるため、保険証券の確認は欠かさず行いましょう。

実務上の注意点やポイント

申告期限は10か月 ― 意外に短い

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

一見すると余裕があるように感じるかもしれませんが、この間に戸籍の収集、財産の調査・評価、遺産分割協議、申告書の作成と、やるべきことは山積みです。

また、遺産分割がまとまらない場合でも、申告期限は延長されません。

この場合は、いったん法定相続分で遺産を分割したものとして申告・納税を行い、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておきましょう。

後日、分割が確定した段階で更正の請求(還付申告)を行うことで、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けることが可能です。

先に一度多めに納税する必要が生じるケースもあるため、納税資金の準備も含めて早めに動くことが重要です。

税務署から届く「お尋ね」への対応

相続が発生すると、税務署から「相続税についてのお知らせ」や「相続税の申告等についてのご案内」といった文書が届くことがあります。

これは税務署がすべての相続に送付しているわけではなく、一定の基準(不動産の保有状況や過去の所得水準など)に基づいて、申告が必要と見込まれる方に送っています。

届いた場合は、「相続税の申告要否検討表」に必要事項を記入して返送するか、実際に申告書を提出することで対応します。

放置しても問題が消えるわけではなく、むしろ税務調査の対象になりやすくなるため、速やかに対処しましょう。

なお、この文書が届かなかったとしても、申告義務が免除されるわけではありません。

届くかどうかにかかわらず、自分で申告の要否を判断する必要があります。

まとめ

「税額がゼロだから申告しなくていい」という思い込みは、相続税の実務においてよくある、そしてダメージの大きい誤解の一つです。

特に配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は該当する方が非常に多く、申告を忘れたことによるトラブルが後を絶ちません。

迷ったときは「とりあえず申告しておく」くらいの心持ちが安全です。

申告しておいて損をすることはありませんが、申告しなかったことで失うものは大きくなり得ます。

少しでも不安がある場合は、早めに税理士などの専門家に相談しましょう。

相続税の申告期限は、思っている以上にあっという間にやってきます

わかば税務会計事務所では、経験豊富なスタッフによる適切なサポートを提供しています。

「相続税額の目安を知りたい」というご相談からでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

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