MENU

2025.10.27
【申告漏れやトラブルを防ぐ!】意外と知らない・見落としやすい相続財産について解説

相続が発生したとき、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは不動産や預貯金ではないでしょうか。

確かにこれらは相続財産の大部分を占めますが、実際の相続財産はもっと多様で複雑です。

そのため、相続財産をつい見落としてしまうというケースも発生しがちです。

見落としてしまった財産を申告しないままでいると、後に税務調査で指摘を受け、追徴課税や延滞税といったペナルティを課されてしまう可能性があります。

実際に、税務調査を受けた相続案件のうち、約8割以上で申告漏れが指摘されているというデータもあります。

本記事では、意外と見落としがちな相続財産について詳しく解説していきます。

相続発生前の準備としても、相続発生後の確認作業としても、ぜひ参考にしてみてください。

Contents

注意したい見落とし財産

通帳や不動産等の財産は、金額や実物が確認しやすいため、漏れてしまうことは稀でしょう。

ですが、目に見える形で残らない資産や、本人しか知らない財産については注意が必要です。

これらは意識的に調査しなければ見落としてしまい、申告漏れのリスクが高まってしまいます。

以下に、特に注意が必要な財産について解説していきます。

注意したい見落とし財産①デジタル資産

デジタル資産とは、インターネット上や電子機器内に存在する、金銭的価値のあるデジタル形式の財産を指します。

スマートフォンやパソコンが日常生活に深く浸透し、多くの取引や資産管理がオンライン上で行われるようになりました。

しかし、これらのデジタル資産は通帳や証書といった物理的な形がないため、本人にしかわからない情報となりがちです。

<デジタル資産の具体例>

デジタル資産には、以下のようなものがあります。

ネット銀行・ネット証券口座紙の通帳が発行されないネット銀行やネット証券は、郵送物も少ないため発見が困難です。
パソコンやスマートフォンの履歴、メール受信箱などから手がかりを探す必要があります。
仮想通貨ビットコインを代表とする仮想通貨は、口座保有者が600万人を超えるとされています。
取引所に預けているケースもあれば、個人でウォレット(電子財布)を管理しているケースもあり、後者の場合は秘密鍵がなければアクセスできません。
電子マネーSuicaやPASMO、PayPay、楽天Payなどにチャージされた残高も相続財産です。
数千円から数万円程度の少額であることが多いですが、相続税の対象となります。
ポイント・マイレージ航空会社などのマイレージや各種ポイントサービスは、サービスごとに相続の可否や手続き方法が異なります。
一部のサービスでは相続できない規約になっているものもあるため、利用規約の確認が必要です。
FX口座外国為替証拠金取引(FX)の口座には、預託証拠金だけでなく、含み損益も存在します。
評価時点での含み損益を含めた金額が相続財産となるため、注意が必要です。

<デジタル資産の相続手続きと注意点①パスワード・セキュリティロック>

パスワードやIDを本人しか知らない状態で亡くなった場合、家族がアクセスする難易度が高くなってしまいます。

アカウント情報やパスワードを記録したり、デジタル資産を一覧化しておくことで、家族の負担を大きく軽減できます。

ただし、パスワードを記録する際は、セキュリティにも配慮し、保管場所や記録方法を慎重に検討しましょう。

<デジタル資産の相続手続きと注意点②各サービスの相続ルールの違い>

デジタルサービスは、提供会社ごとに利用規約が異なります。

相続可能なサービスもあれば、本人限りで失効するものもあるため、各サービスの規約確認が不可欠です。

一般的には、死亡診断書や戸籍謄本、相続人であることを証明する書類の提出を求められます。

<デジタル資産の調査方法>

デジタル資産については、以下のような方法で手がかりを探してみましょう。

●スマートフォンやパソコンのメール受信箱を確認
●ブラウザの閲覧履歴やブックマークをチェック
●クレジットカードの明細から、オンラインサービスの利用状況を把握
●銀行口座の入出金履歴から、ネットサービスへの支払いを確認

注意したい見落とし財産②マイナス財産

相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(債務)も含まれます。

中でも、以下のような見落としやすいマイナス財産には注意が必要です。

マイナス財産は相続税の計算上、相続財産から控除できますが、見落とすと相続人が予期せぬ負担を負ってしまうことになります。

場合によっては、相続放棄の検討が必要になるケースもあるため、しっかり確認することが大切です。

<借入金>

銀行などの金融機関からの借入金やカードローンは、信用情報機関への照会で確認できます。

住宅ローンについては、団体信用生命保険に加入している場合、保険金で完済されることもあります。

<未払税金>

所得税、住民税、固定資産税など、死亡時点で未払いの税金は相続人が引き継ぎます。

市区町村から送られてくる納税通知書を確認しましょう。

<保証債務>

故人が他人の借入金の連帯保証人になっていた場合、その地位も相続されます。

主債務者が返済不能になれば、相続人が返済義務を負うことになるため、特に注意が必要です。

<家賃や水道光熱費などの未払い>

賃貸住宅に住んでいた場合の家賃、電気・ガス・水道料金なども未払い分があれば相続債務となります。

<クレジットカードの未払い残高>

クレジットカードの利用残高や分割払いの残債も債務として引き継がれます。

カード会社からの請求書を確認しましょう。

<サブスクリプションサービスの継続課金>

解約しない限り自動的に課金が続くため、早期に解約手続きを行う必要があります。

注意したい見落とし財産③実物資産

デジタル資産とは対照的に、実物資産は物理的に存在するものです。

しかし、貸金庫やタンス預金のように保管場所が明確でないものや、骨董品のように価値の判断が難しいものは、相続時に見落とされやすい傾向にあります。

家族が存在を知らない、または価値を過小評価しているケースも多く見られます

<貸金庫の中身>

貸金庫は、銀行の支店に設置された金庫室の一区画を借りて貴重品を保管するサービスです。

本人以外は存在を知らないことが多く、相続時に見落とされやすい財産の一つです。

貸金庫を開ける際は、金融機関によって手続きが異なりますが、多くの場合、相続人全員の同意が必要とされます。

戸籍謄本や遺産分割協議書などの提出を求められることもあります。

また、税務署は、金融機関への照会によって貸金庫の開閉履歴や利用料の引き落とし状況を把握できます。

「誰も知らないから申告しなくてもいい」という考えは通用しません。

<自宅・タンス預金>

自宅に保管されている現金、いわゆる「タンス預金」は、通帳や証券のような記録が残らないため、相続税の申告から漏れやすい財産です。

税務署は、被相続人の過去の預金口座について、最大10年分の入出金履歴を調査する権限を持っています。

多額の現金を引き出していた履歴からタンス預金の存在を把握することができるのです。

<その他の実物資産の例>

●骨董品・美術品
●貴金属・宝石
●高級時計・ブランド品
●着物・毛皮
●自動車・バイク

注意したい見落とし財産④海外資産

国際的な資産管理が普及する中、海外資産を持つ人は増えています。

海外に銀行口座や証券口座、不動産を持っている場合、それらも相続財産となります。

特に、海外不動産を所有している場合は、その国の法律(相続分割主義など)によって手続きが複雑になることがあるため、専門家への相談が不可欠です。

意外な相続財産

ここからは、あまり知られていない相続財産について解説します。

これらは相続財産になるという認識が薄いため、見落とされやすい項目です。

知っていることで有効に活用できるものもあるため、事前に把握しておきましょう。

意外な相続財産①自動車保険の等級

自動車保険には、1等級から20等級までのノンフリート等級制度が設けられています。

無事故期間が長いほど等級が上がり、保険料の割引率も高くなります。

自動車保険の等級は、配偶者や同居の親族であれば引き継ぐことができるため、故人が高い等級だった場合、その等級を引き継ぐことで、保険料を大幅に節約できます。

一般的には、相続開始から一定期間内に手続きをする必要があるため、早めに保険会社に相談しましょう。

ただし、配偶者は別居していても等級を引き継げますが、子どもの場合は同居していることが条件となります。

意外な相続財産②未払いの支給・還付金等

故人が生前に受け取る権利があったものの、死亡時点で未払いだった金銭は、相続財産として相続人が受け取ることができます。

しかし、これらは請求しない限り支払われないことが多く、見落としやすい財産です。

<未収給与・退職金>

月末締めの翌月払いなど、給与の支払いタイミングによっては、死亡後に支払われる給与が発生します。

これらは相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります。

<高額療養費制度>

高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。

本人の死亡後でも相続人が高額療養費の還付を受けることができます。

ただし、相続放棄を検討している場合、還付金を受け取ると「相続を承認した」とみなされる可能性があります

相続放棄を考えている方は、受け取る前に専門家に相談することをおすすめします。

<医療保険・介護保険料の精算金>

相続発生前に支払った医療保険料や介護保険料は、月割りで精算され、還付される場合があります。

市区町村から通知が届くこともありますが、自ら確認することも大切です。

<生命保険の受取金(みなし相続財産)>

生命保険の死亡保険金は、民法上は相続財産ではありませんが、相続税法上は「みなし相続財産」として課税対象となります。

ですが、生命保険金には、非課税枠が設けられているため、うまく活用することで節税となるケースもあります。

<年金の未支給分>

年金は後払い制のため、死亡月の年金が未支給となることがあります。

未支給年金は、生計を同じくしていた遺族が請求できます。

ただし、税法上は相続財産ではなく、遺族の一時所得として扱われます

意外な相続財産③会員権

1980年代のバブル期には、ゴルフ会員権が数千万円で取引されていました。

その後価値が下落し、忘れられたまま放置されていることがあります。

ただし、ゴルフ場の会則によっては、相続が認められないケースや、相続時に名義変更料が必要なケースがあります。

必ず会則を確認しましょう。

その他の会員権など
●各種会員権
●リゾート会員権
●スポーツクラブ会員権
●冠婚葬祭互助会の積立金

意外な相続財産④貸付金・未収金

<同族会社への貸付金>

被相続人が経営していた会社に資金を貸し付けていた場合、その貸付金は相続財産となります。

会社の帳簿上、役員借入金として計上されていることが多いです。

<友人・親族への個人間貸付>

友人や親族にお金を貸していた場合、借用書の有無にかかわらず、相続財産となります。

口約束だけの貸付は証明が難しいですが、通帳の振込履歴などが証拠になります。

原則として額面評価

貸付金は、原則として額面どおりの金額で評価されます。

相手が返済できる見込みがなくても、相続税の計算上は財産として計上しなければなりません。

貸付金が回収不能として評価額を減額できるのは、「債務者が破産している」「行方不明で長期間連絡が取れない」といった非常に限られたケースのみです。

見落としを減らすために生前に行うべき対策

財産目録の作成

すべての資産と負債をリスト化した財産目録を作成しておくと、残された家族の負担が軽減されます。

不動産、預貯金、有価証券、保険、デジタル資産、負債などを項目ごとに整理します。

財産目録には以下の情報を記載しておくと良いでしょう。

また、作成して終わりではなく、定期的に更新することも大切です。

●資産の種類と名称
●金融機関名や口座番号
●おおよその評価額
●保管場所や問い合わせ先

エンディングノートの作成

エンディングノートは、自分の意思や情報を家族に伝えるためのツールです。

上記の財産目録と合わせて、より幅広く情報を記録しておくことができます。

特にデジタル資産のアカウント・ログイン情報なども記録しておくと、相続後に誰もアクセスできなくなってしまう事態を防げます

ただし、パスワードなどの重要情報になりますので、保管場所や管理方法には十分注意しましょう。

終活アプリの活用

近年では、デジタル資産を管理するための終活アプリも登場しています。

これらのアプリを活用すれば、アカウント情報等を保管し、万が一の際に指定した人に情報を引き継ぐことができます。

家族との情報共有

財産の所在について、家族と定期的に情報共有することが大切です。

ただし、すべてを詳細に伝える必要はありません。

「どこに何があるか」という大まかな情報だけでも、相続発生後の調査がスムーズになります。

遺言書の作成

遺言書には、財産の分割方法だけでなく、財産の所在を記載することもできます。

「〇〇銀行に預金口座がある」「△△証券に口座がある」といった情報を残しておくことで、相続人の財産調査が容易になります。

公正証書遺言であれば、公証人が関与するため法的効力も確実です。

郵便物・手帳などの保管

金融機関からの通知、保険会社からの案内、クレジットカードの明細など、郵便物は資産や債務の存在がわかる貴重な情報源です。

また、通帳や手帳、スケジュール帳なども重要な手がかりです。

メモ書きや連絡先から、取引のあった金融機関や証券会社を特定できることもあります。

これらをわかりやすくまとめて保管しておくと、相続発生時にスムーズに行動することができます。

まとめ

デジタル化が進む現代では、目に見えない資産も増え続けており、見落としのリスクはますます高まっています。

見落としによる申告漏れは、追徴課税や延滞税といったペナルティだけでなく、相続人間の信頼関係を損なう原因にもなりかねません

こうしたリスクを避けるためには、生前からの準備が何より重要です。

目録を作成し、家族と情報を共有することで、万が一の際にも円滑な相続手続きが可能になります。

また、相続が発生した際には、「これくらいは大丈夫だろう」と自己判断せず、不明な点があれば早めに専門家に相談することが大切です。

わかば税務会計事務所では、経験豊富なスタッフが相談に対応しております。

質問だけでも構いませんので、相続に関する不安がある方は是非お気軽にご相談ください。

よく読まれているコラム
初回相談無料お気軽にお問い合わせください
お電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:00〜18:00事前のご予約で夜間・土日祝もご対応いたします。
メールでのお問い合わせ
お急ぎの方や直接話したい方はお電話ください。